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札幌市の市政相談窓口には「自覚なくカスハラしてるかも?」と気づきを促すポスターがいくつも掲示されている=2024年4月、札幌市中央区
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 市民からの暴言や過度な要求にどう対応するか――。

 カスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題となるなか、札幌市の広聴部門が策定したマニュアルに同じ悩みを抱える自治体から問い合わせが相次いでいる。

 「あんた、辞めなさいよ。仕事辞めなさい」

 「辞めなかったら刺し殺す」

 今年1月初旬、広聴部門の電話窓口で1時間ほど対応にあたった女性職員は、相手からそんな言葉をかけられた。「脅迫行為にあたる」と判断した市側は、即日、警察に通報。被害届も出した。これは、その前日から運用を始めたカスハラ対策マニュアルに沿った対応だという。

6時間拘束・ひわいな言葉・土下座強要…

 市民の声を聞く課によると、マニュアル策定のきっかけの一つは広聴部門の職員へのアンケート(56人中42人が回答)だった。

 「カスハラを受けたことがあるか」との質問に、ほとんどが「受けたことがある」。さらに9割が「その対応にストレスを感じた」と答えた。電話で6時間の拘束、ひわいな言葉、「ばかやろう」「頭が悪い」などの暴言、「殺す」などの脅迫、揚げ足取り、土下座の強要……。様々な経験をした職員がいる。

 「カスハラという言葉や概念が広がる前は、そのような行為があっても『住民のために尽くすのが公務員』『罵声を浴びせられても、それも仕事のうち』。そんな意識がどこかにありました」

 同課の谷川晋介さんは、そう振り返る。

 ただ近年、民間企業は「お客様」でも、度を越している人に対しては組織として毅然(きぜん)とした対応を取り始めた。厚生労働省も「カスハラ対策企業マニュアル」を公開している。

 「自治体は市民の生命に直結する問題も扱うので、慎重さや丁寧さが求められる。配慮もいる。ただ、職員を守り、ほかの市民対応への影響を最小限にするためにも、『看過できないものは我々も毅然とした対応をとってもよいのではないか』と考え始めました」(谷川さん)

記事後半では「脅迫や強要などの行為があった場合は、ちゅうちょせずに警察や関係機関に連絡する」など、マニュアルで定めた具体的な対応目安を紹介します。

ポスターに「効果」、みるみるトーンダウン

 まずは昨夏、窓口に来た市民…

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